トロピカルとサイデリアル

西洋占星術にはさまざまの種類があり、何を選択するかで若干解釈が変わります。
古くから ”VS” として取り上げられていたのが、
「トロピカル方式かサイデリアル方式か」
というもの。西洋占星術では「トロピカル方式」が圧倒的に多く、インド占星術では基本「サイデリアル方式」です。

言葉云々よりも、これらの違いは結果として「サイン、すなわち星座が1つズレます」ということ。
おひつじ座、と思っていた人はうお座へ
てんびん座と思っていた人はおとめ座へ
性質的に結構…かなり異なってくるはずです。

で、どれが本当なの?
というところを、順を追って簡単に見ていきましょう。
目次を参考に、お好きなところからご覧ください。


トロピカル方式

トロピカル式とは
「春分の日」を「牡羊座の0度」と定め、そこを基準として、牡羊座から魚座までの12星座にそれぞれ30度ずつ均等に割り当てる方式、のことを言います。


春分の日は、天の赤道と黄道(太陽の通り道)がぴったり重なる地点。詳しい説明は省略しますが、
ウィキペディア ↓
「黄道帯ー黄道の上下に9度の幅をとって空にできる帯のこと。獣を象った星座を多く通ることから獣帯(じゅうたい)とも呼ばれる。現在、黄道帯には13の星座があり、このうちへびつかい座を除いた12の星座を黄道十二星座という」。
 

すでに紀元前には誕生していた「占星術」、当時の春分の日の空には「牡羊座」がありました。
星座は果てしなく大きく遠く、動いてはいるものの、日ごとに人間が目で見て確認できるほどの移動距離ではありません。
よって、その当時はずっと「牡羊座」が空にあったー
だから「春分の日=牡羊座スタート」と【決めた】ということです。
 

そして黄道=太陽の通り道上にある12の星座、それぞれを12等分=1星座30度分、を割り当てました。のちに「へびつかい座」も発見されましたが、占星術上に組み込まれることはなかったようですね。
 
 
 

サイデリアル式

春分の日=牡羊座0度と決めましたが、見える星座は少しずつ変化します。
正式には「歳差運動(さいさうんどう)」と言われるもので、地球の地軸がまっすぐではなく若干(約23.4度)傾いていることから起きる現象です。

 
そのため
春分点は72年に1度の割合で毎年少しずつ逆行することになる=春分の日の空には、牡羊座ではなく、現在は「魚座」がいます。
1星座に割り当てられた度数は均一に30度、現在は24度ほどズレが生じているので、ほとんどの人の星座は1つずつズレることになります。

 
このサイデリアル式は、インド占星術では基本的に採用されている方法ですが、基準値となる指標がまたさまざまにあるようです。
有名なのは、インド政府が公認している「恒星スピカから180度の位置をスタート地点とするラヒリ方式」であり、私もこちらを採用しています。
地球から見て、黄道上にある黄道十二星座の方角が基準となっています。
 
 
サイデリアル・ラヒリ式だと、春分の日の空には「魚座」があります。
現在の空にある星たちが反映されている、正確には「トロピカル式よりは反映されている」状態です。

 
サイデリアル式でも、12星座を各30度ずつで「区切って」いますが、実際の空の星座に区分はなく、全部が均一な「30度」というわけでもありません。乙女座はかなり大きいですし(乙女、なのだけど…)、蠍座は気の毒なほど小さい。均等には区切れるわけもなく、そう【決めた】という学問的な部分ももちろん残ります。

 

 

どちらが正しいのか

トロピカル式の活用法

「西洋占星術は、骨の髄まで数字のシステム」と、占星術家の松村潔先生も書かれています。(完全マスター西洋占星術)
今は手書きでホロスコープを計算・作成することなく、数字を入力すればホロスコープは秒で出来上がる、という便利な時代ですが、以前は全て手計算・手書きでしたから、それはそれは骨が折れる作業だったのではないでしょうか?

 
ホロスコープは、そもそもが計算式の、数字の世界、だから”術”であると言えるのでしょう。占星術ですから、未来を予想して、当たるのか / 当たらないのか、を読み解いたわけですが、これは「今」「空にある星」と、区別して見る必要があります。

 
厳密には、空に輝く星ー星座は「ひらがな表記」ーおひつじ座、
占星術では、実際の星座と区別するために、星座とは言わず「サイン」と呼び、「漢字表記」ー牡羊座、です。
 

そして、占星術は昔からの叡智、実際の空の星座とは別の、このシステムには「当たる」という計算式が埋め込まれているものです。だから何年も時代を超えて、語り継がれ改良されて生き続けている学問なのではないでしょうか。

 
ちなみに
トロピカル式は「季節感を伴うシステム」とも言われています。
春分の日が牡羊座ですから、春は牡羊座 / 牡牛座 / 双子座、夏は蟹座 / 獅子座 / 乙女座、秋は天秤座 / 蠍座/ 射手座、冬は山羊座 / 水瓶座 / 魚座。

 
サイデリアル式でいうと、少しずつ春分の日の空の星座がズレてゆき、12000~13000年後には、春分の日の空には「天秤座」がやってくる。

季節が真逆になりますね。
春が天秤座なら、暑い夏に山羊座、しっとり中秋の満月に牡羊座、寒い冬に獅子座…
今とはひっくり返る。
だから、いつの時代も同じ季節感を伴うサインシステム、ということも言えるでしょう。
 

 
 

サイデリアル式の活用法

対して
サイデリアル式では、「今の空の星」を意識したシステムであると言えます。
とはいえ、既に書いたように、各星座は30度ごとに区切れるわけでもないため、そのままの空の星座ではなく「サイン」でもあります。
 

程度の違い、というところですが
システムという決まりに囚われず、より「現在の空に輝く星」のエネルギー、という意味では軍配が上がります。


私はインド占星術に詳しくありませんが
インド占星術で扱う惑星は土星まで、トランスサタニアンと呼ばれる「天王星・海王星・冥王星」はホロスコープ上に存在しません。以前鑑定してもらった際に、なぜ取り入れていないのかを尋ねたところ、
「天王星や海王星は(冥王星は準惑星であり、惑星外)、肉眼では見えず、望遠鏡などを使用して確認するものだから」だそうです。
 
トランスサタニアンは、西洋占星術では重要な惑星たちですので、やはり術によって考え方はさまざまです。

 
また、星座が1つズレる、ということ。
これはなかなかの衝撃ですが、年齢と共に、サイデリアル式の方がしっくり馴染むようになる、という人も多いですね~、とサラっとおっしゃっていましたね。
これは、後述する「サイデリアルタイプの人」なのかな、という感想を持っています。



 

組み合わせて活用する

結局、どちらが正しいのか、ではなく
どちらもそれなりに確立した別個のシステム、ということです。

占星術家として、あるいは自身でホロスコープを見る時にも、しっくりくる方、好きな方を取り入れてみるのが良いと思います。

 
当方の場合には
日々の星の動きはサイデリアル式で見ています。 <実際の、星の状態に近いため>
なので、「○○座の新月」「月が○○座へ」、などの記事はよく見かけますが、ちょっと当てはまらない…。○○座の新月といった場合、大体が1サインズレてくるからです。

 
鑑定、セッションの場合には
トロピカル式とサイデリアル式の両方を見ています。

まず、「自分の星座、しっくりきていますか、違和感ありますか」の質問をさせて頂き参考にもしています。トロピカルの方 / サイデリアルの方、という、どちらか寄りというのが人によって変わってきます。
この辺は、占星術家というより、エネルギーワーカーの視点から採用しています。
 
 

 

解釈の仕方

参考までに。
星座、サインが1つズレるとかなり性質が異なってきます。
ホロスコープ上は、隣り合うサインの性質は全く異なるもの。色のグラデーションのように、赤とオレンジは似ている、オレンジと黄色は似ている、というものではありません。

とはいえ
サインが異なるだけで、そもそもサインの存在しない「ヘリオセントリック」では関係ない話、惑星の位置、角度に変わりはありません。

なので、根幹となるものは変わらず、どう活かすのか、それにまつわる資質の解釈が変わってきます。

例)「強さ」がある。
火のエレメントー牡羊座 / 獅子座 / 射手座 = 決めたことを踏み出す強さ、正面突破で切り抜ける行動力 そういった勢いのある強さです

地のエレメントー牡牛座 / 乙女座 / 山羊座 = コツコツと積み上げ、決して揺れない、折れない芯のある強さ。スピードよりも継続力の強さです

風のエレメントー双子座 / 天秤座 / 水瓶座 = 枠にはまらない、自由な発想、それを開拓できる強さ。軽やかに、風のように周りを巻き込む強さもあります

水のエレメントー蟹座 / 蠍座 / 魚座 = すべてを受容する母なる女帝の強さ。水ー液体なので、どんな形にも対応できるという柔軟性を持つ強さもあります

 
この強さをどう育てるのか、どんな環境で発揮するのか。
方法が違っていれば、違和感が出たり、本来持っている才能が十分に発揮されないことにもつながります。

自分の持ってきた資質・才能を活かすーそれが魂の想いでもあり、自身が最も充実していながら、さらには周りの人々の利益にもなることです。
その方法はホロスコープに詰まっています。
自分を知る最強の手段、上手に活用していきましょう。 

 


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